尺終:シアタートーク①
2023年10月25日(水)新国立劇場「尺には尺を」「終わりよければすべてよし」
シアタートーク①
司会の中井美穂さん登場。
俳優さんはいろいろ着替えたり準備があるので、と、まずは演出の鵜山さん登場。しばらくふたりでトーク。
既に作品を観た人はどれくらいいらっしゃいますか?と聞くと、かなりの人が挙手。そしたらいろいろ話しても大丈夫ですね、みたいな流れ。
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中井:シェイクスピアシリーズは14年前にスタートしましたね。こんなに長く続くと思っていましたか?
鵜山:いや、最初の3部作で達成感があったので、もうこれでいいかな、と思っていましたが、ずっと続いてきて。今回またオファーがあり、やることになりました。
中井:2009年の「ヘンリー六世」に始まって、2012年「リチャード三世」、2016年「ヘンリー四世」、2018年「ヘンリー五世」、2020年「リチャード二世」、そして今回、この2作品を同時に同じ劇場でやる、と聞いてどう思いましたか?
鵜山:プロデューサーが悪趣味で(笑)。そもそも「終わりよければすべてよし」ってタイトルが適当な感じですよね。いい加減。
2作品は驚くほど似ている。人間の過ちをどう修復するのか、というある意味倫理的(なテーマを持っている)だということに、やっているうちに気がつきました。
ベッド・トリックについて。心がけ次第で価値が変わる。見た目はどうでもいい、というか、あんなに嫌っていたのに美しく見えたり。敵が味方に変わったり、(簡単に価値観がひっくりかえることは)危険な反面、人間の心が変わっていくこと、(人間の心の面白さ)、そういうことを余裕を持って眺めていれば、風通しのよい生き方ができるのではないかと思う。
中井:400年前くらいまえに書かれた物語なのに、とても現代に近しい感覚がありますよね。
鵜山:コロナ、戦争、価値観がひっくり返るような出来事ばかり起きている。1600年代に書かれてるけど、400年前は遠くなかった。
中井:俯瞰で見る歴史のスパンというか、それはどういう感覚なのでしょう?
鵜山:(2009年の「ヘンリー六世」から)14年、その間に確実に「死」の世界に近づいているわけです。(自分自身も歳を重ねて死に近づいているということ?) 死んだ人、死の世界の人とも仲良くしないと、(と思うようになった)。コロナ禍でだいぶ(そういうことを)教わりました。
芝居にも教わった。400年、4000年、4万年も先に繋がっていく。400年なんてシェイクスピアを演じてたらすぐですよ。そういうスパンで(物事や芝居を?)考える。そういうゆとりが必要だと思う。というか考えないとやってられない年代なので(笑)。
ゆとりというかノイズ。不要不急のものが(人生を、心を)助けてくれる。コロナ禍になり、エンタメは不要不急だと言われたけれど。まあ演劇の居直り、というか、不要不急と言われたことへの復讐ですよ(笑)
改めて稽古前に脚本を読んでみたら、なんでこの人がこのタイミングで出てくるのか?と思うことも。でもそういう余計なものが幸福をもたらす。整理されてない雑多な人が(いることには意味がある、的な?)。そういうエピソードを無くせば(話ももっとシェイプされるけど、的な話)雑味がいっぱいあり、だからこそおかしみがある。改めてシェイクスピアはすごい作家だなと。
中井:同級生や会社、こういう人、周りに、近くにいるな、とか思えます。
鵜山:つきあってると(=シェイクスピアの脚本に向き合っていると?)小ジワが伸びる感じがする。
中井:シワというと…?
鵜山:この人にも家庭、人生がある、と。(=人生ののりしろ的なことを感じるということ?)
中井:落語の世界に似てますね。世界の縮図というか。
あっ、なんか(袖から)足音が聞こえますね。
ーーここで役者4人登場。
→シアタートーク②に続きます。